顔面けいれん
病態と治療について
顔面の筋肉の一部が発作的に不随意に攣縮するもので、顔面神経が過剰に興奮するために生じると考えられています。その原因は、脳の脳幹と呼ばれる部分から生じて、最終的には顔の運動をつかさどる顔面神経に屈曲した脳深部の動脈や静脈が直接ぶつかり、神経を圧迫、刺激することで症状が出現します。
この病気自体は生命の維持には問題ありませんが、日常生活に支障をきたすこともあり、また経過とともにけいれんの期間が長くなり、ときに硬直性けいれん発作のため眼が開けられなくなることもあります。さらに重症になると顔面神経に麻痺が生じることもあります。
顔面痙攣に対する脳神経減圧術について
顔面けいれんの原因となっている脳深部血管の顔面神経への圧迫を手術によって取り除く方法です。手術は全身麻酔下、病側を上にした側臥位で行われます。病側の耳の後ろで毛髪を部分的に剃毛します。毛髪が生えていた範囲内で7cm程度の直線状の皮膚切開をおこない、筋層を剥離し頭蓋骨(後頭骨)を露出させ、医療用のドリルなどを用いて長径で4cm程度の小開頭を施行します。この際にくり抜いた骨は手術終了時にはめ込み、チタン製の金属で固定します。開頭終了後に手術用顕微鏡を用いて、脳を覆っている硬膜、くも膜と呼ばれる膜を切開します。くも膜を切開すると髄液と呼ばれる脳の表面を循環している液体が流出します。髄液が流出するとその体積分脳が沈み込むため、頭蓋骨と脳の間の空間が生じ、その空間を利用することで脳を痛めずに手術をすることが可能になります。その後、喉、舌、顔面の感覚あるいは聴力に関わる神経や脳の血管を剥離しながら、顔の筋肉の運動に関わる神経(顔面神経)を確認します。顔面神経を圧迫する血管があればそれを剥離し、神経への圧迫を解除します。圧迫を加えていた血管については移動させた上で、再度顔面神経に圧迫を加えることがないように、医療用の接着剤(血液製剤)で周囲の頭蓋骨や硬膜に接着したり、医療用のスポンジなどを利用して顔面神経に直接圧迫が加わらないようにする方法をとります。以上の操作の間に、最も影響を受けやすい聴力に関わる神経の状態を確認しながら手術を行います。以上の操作を終了し、周囲組織の状態や止血を確認した後に、硬膜の縫合、上述の通り頭蓋骨の修復を行い、頭皮下の筋肉・皮下組織・頭皮をそれぞれ縫合し手術を終了します。 その有効性は約90%程度効果が期待できます。
三叉神経痛
顔の感覚をつかさどる三叉神経になんらかの異常が生じて、その感覚の領域に主に発作的に電撃痛や焼け火箸を突き刺されるような痛みを生じる病気です。 その原因は、いわゆる<脳幹>と呼ばれる主に生命の維持に必須の機能を持った部分から生じて最終的には顔の知覚を伝えるように分布する三叉神経に、動脈硬化などで屈曲した脳深部の動脈や静脈が直接ぶつかり、神経を圧迫することによって生じていると考えられます。
この病気自体は生命の維持には問題ありませんが、三叉神経痛の痛みとは激烈なことが多く、治療法の無かった時代には、これが原因でひどいうつ状態になったり、食事が出来なくて体力の消耗を来したりすることがありました。くわえて痛みの生じる頻度と持続時間は、時と共に増悪傾向を示すことが知られています。
三叉神経痛に対する脳神経減圧術について
三叉神経痛の原因となっている脳深部血管の三叉神経への圧迫を手術によって取り除きます。手術は全身麻酔下、病側を上にした側臥位で行われます。病側の耳の後ろで毛髪を部分的に剃毛します。毛髪が生えていた範囲内で7cm程度の直線状の皮膚切開をおこない、筋層を剥離し頭蓋骨(後頭骨)を露出させ、医療用のドリルなどを用いて長径で4cm程度の小開頭を施行します。この際にくり抜いた骨は手術終了時にはめ込み、チタン製の金属で固定します。開頭終了後に手術用顕微鏡を用いて、脳を覆っている硬膜、くも膜と呼ばれる膜を切開します。くも膜を切開すると髄液と呼ばれる脳の表面を循環している液体が流出します。髄液が流出するとその体積分脳が沈み込むため、頭蓋骨と脳の間の空間が生じ、その空間を利用することで脳を痛めずに手術をすることが可能になります。その後、喉、舌、顔面の感覚あるいは聴力に関わる神経や脳の血管を剥離しながら、脳深部にある三叉神経に到達します。三叉神経を圧迫する血管があればそれを剥離し、神経への圧迫を解除します。圧迫を加えていた血管については移動させた上で、再度三叉神経に圧迫を加えることがないように、医療用の接着剤(血液製剤)で周囲の頭蓋骨や硬膜に接着したり、医療用のスポンジなどを利用して顔面神経に直接圧迫が加わらないようにする方法をとります。以上の操作の間に、最も影響を受けやすい聴力に関わる神経の状態を確認しながら手術を行います。以上の操作を終了し、周囲組織の状態や止血を確認した後に、硬膜の縫合、上述の通り頭蓋骨の修復を行い、頭皮下の筋肉・皮下組織・頭皮をそれぞれ縫合し手術を終了します。 その有効性は約90%程度効果が期待できます。
☆執刀担当医
岩崎孝一 佐々木庸