正常圧水頭症に対するシャント術

病態と治療について

 認知症の原因としてアルツハイマー病、脳血管障害性痴呆(脳梗塞や脳出血で脳に損傷を受けて発症する認知)がありますが、もう一つの原因として正常圧水頭症という病態があります。これは髄液の灌流障害等も関与していますので、タップテスト(二泊三日入院検査)といわれる腰椎からの髄液排出を実施した場合に一時的な髄液減少から認知症状(特に歩行機能、他、記憶力や排尿障害)が短期間改善する場合で、MRIにてダッシュサインが認められる場合は、積極的に手術を実施することで一定期間(基本的に進行性の病行きですから永久の効果はありません。)歩行状態や認知症状の改善が期待できます。

過剰な髄液を腹腔内に排出させるシャント術は、腰椎から髄液を排出させる腰椎-腹腔短絡術(LPシャント)と、脳室から髄液を排出させる脳室-腹腔短絡術(VPシャント)の二つに大別されます。術前検査で頸椎や腰椎に中長期的にヘルニアなどでの手術の必要性が発生しないかを予測診療した上で執刀医がどちらを優先するかを判断します。

シャント手術(腰椎-腹腔短絡術)

 手術は全身麻酔で行います。腰椎(第3〜第4腰椎間付近)より専用の器具を用いて穿刺し、脊柱管内にチューブを挿入します。そのチューブのもう一方の先は皮下を通して、腹腔(腸管が入っているところ)の中に挿入します。これで過剰な髄液が脳室から、腹腔内に流れ、その髄液は腹腔内の腸管膜にて吸収されることとなります。また、髄液の流れる量はチューブの間に流量調整のバルブをつけて調整します。手術60~90分程度を要します。

尚、腰椎が大変変形が強く、想定外にドレーンを硬膜下に挿入できない場合もあります。その場合は緊急的に脳室から穿刺する可能性があります。

シャント手術(脳室-腹腔短絡術)

 手術はLPシャントと同様の全身麻酔で行います。脳室を穿刺しますので脳に微少ながら傷が入ることから、術前MRI検査で頸椎や腰椎に中長期的に手術が必要となる可能性のある変形やヘルニアがある方に優先的に実施しています。頭部に約3cmほどの皮膚切開を加えて、頭蓋骨に1円玉ほどの穴を開けます。そこから、脳室に向かってチューブを挿入し、脳室の中に留置します。そのチューブのもう一方の先は皮下を通して、腹腔(腸管が入っているところ)の中に挿入します。これで過剰な髄液が脳室から、腹腔内に流れ、その髄液は腹腔内の腸管膜に吸収されることとなります。また、髄液の流れる量はチューブの間に流量調整のバルブをつけて調整します。手術60~90分程度を要します。

☆執刀担当医師
宮崎晃一  佐々木庸  矢野達也 森田  山下晋  鈴木聡  

その歩きにくさ、治せるかもしれません!

〜特発性正常圧水頭症について〜

 加齢とともに、歩きにくさや、頭がよく働かない感じ、また尿漏れなどを感じていませんか?これらの症状の原因は多くのものが考えられますが、その中の一つに特発性正常圧水頭症という病気があります。これは脳の中の髄液とよばれる液体が通常よりも多くなっており、これを抜くことにより歩きにくさなどの症状を改善することができる疾患です。
 治療は全身麻酔で1時間程度の手術で、シャントチューブと呼ばれる髄液の流れを変える細い管を埋め込みます。この治療に10日前後の入院が必要ですが、驚くほど早く歩けるようになったり、会話がスムーズになる患者様が実際に多くいらっしゃいます。私はこの特発性正常圧水頭症の診断と治療にとりくみ、これまでに300人以上の患者様を診察し130人以上の手術を行ってきました。

 この病気は特にご高齢の方に多いため、他にもアルツハイマー型認知症や腰痛など加齢に伴う疾患を合わせて持たれている患者様に多く出会います。従って、お会いした患者様一人ひとりの生活などの背景はもちろんのこと、他の認知症や脳卒中歴、頸や腰の問題といった生活の質にかかわる疾患や障害をすべて合わせて慎重に治療方針を検討します。その上で、手術を受けた方が生活がよりよくなる、または手術なしに他の治療を優先すべきである、などと最善の提案ができるよう努力を続けています。症状がよくなり日々の生活も向上する患者様にお会いできることは、医師として一番の喜びです。すでに認知症などの診断を受けている方でも、もしかしたら今も治療可能な症状があるかも知れません。年齢のためとあきらめてしまわずに、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)

シリコン製チューブを頭からお腹までの皮下を通し、これにより脳の中にたまっている脳脊髄液を腹腔に流して排出する方法。世界的に一番多く行われている水頭症の治療法。


腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)

腰椎の内側から脳脊髄液を腹腔に流す治療法で、シリコン製チューブは背中からお腹までの皮下を通る。頭を手術しない利点がある一方で、腰が悪い患者様には不適な場合もある。


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